「もうちょっと選んでいいのに、選んだ方がいいのに」
パンを含め食料品やお店が氾濫している今の状況を見ていてそう思います。
パンや小麦粉の原料である小麦の生産者から見て、「うわー知らないんだ」と思うことが多々あります。
「今より少しでも知ってもらえたら」、そんな想いを込めて、北海道の農場、小麦の生産現場からパンの原料になる小麦のことを生産者視点でお伝えします。
しっかりしたパン屋さんの選び方
パン屋さんで店員さんに「このパンに使われている小麦の名前を教えて下さい」と聞いてみてください。
どんな答えでも構いませんが、そのそぶりで信頼できる店かどうかわかります。
粉になる前の小麦には1つ1つに名前があり、誕生の背景、歴史があり、そこには沢山の想いが込められています。
しっかりした職人さん、お店はそのことがわかっています。
おそらく地域に1店あるかないかだと思います、あればそのお店は地域の宝ですので大切にしてください。
北海道産パン用途小麦の主な品種まとめ
春小麦:4月(春)に種を蒔き8月に収穫
- ハルユタカ
- 春よ恋
- ハルキラリ
秋小麦:9月(秋)に種を蒔き越冬、翌年7月末~8月初旬に収穫
- キタノカオリ
- ゆめちから(超強力)
- ホクシン(準強力)
- きたほなみ(中力)
いくつか品種がありどれも個性的ですが、その中でもパン用として特に人気が高い「キタノカオリ」をご紹介します。
国産小麦のパン用粉(強力粉)は今や普通に手にすることが出来ますが、ほんの10数年前までは殆んど見かけませんでした。
強力粉用途として2003年に品種登録されたキタノカオリは、それまで無理とされていた国産秋小麦での硬質品種の育種でしたが、その常識を打ち破り史上初の快挙と共に登場しました。
ほんのり黄色く甘いその粉の特徴的な個性で、今や不動の人気となりました、しかし栽培適正はお世辞にもよいとは言えず生産者泣かせの品種です。
8月の畑の風景、何度も耕し種まきの準備をします。
ここまでの作業をパン作りに例えると、生地作りにとてもよく似ています。
しっかりと土作りをすれば、土から甘い芳香が漂うようになります。
北海道では通例9月中旬に種まきをしますが、有機栽培の場合は種まきを少し早めます。
約1週間~10日ほどでキタノカオリの発芽が揃いました。
この後、12月からは積雪下で長い越冬期間となります。
自然は語りませんが実に多くのことを教えてくれます、小麦も語りませんが長く付き合うほど自然とわかり合えるようになるのは動物のそれと同じです。
パンを選ぶ時、小麦粉を選ぶ時、わかって選んで貰えるよう、そんな人が増えるように願っています。
profile:中川農場
北海道の農場で主に小麦をオーガニックや自然栽培で生産。農場の歴史は約90年、オーガニック転換から約18年。
【blog】https://pirkaamam.com