
- 適度に水をじゃばーっとかける。
- オーブンで湯気が出るまで温める。
- 鼻を埋めるくらい近づけて匂いを嗅ぐ。
- 2種類以上嗅ぎ食べ比べる。
- 嗅いでは食べを繰り返す。
- 古い粉が使われている場合は酸化臭ですぐわかります。
- たまに金属臭のする粉があります。
- 本当の挽き立ての粉は別格です。


2008年に収穫した8年前の無農薬・無化学肥料のキタノカオリ100%使用
そんな古い小麦、どこにあったんでしょうね?
基本的に製粉した粉が流通する時には、新麦をアピールする目的以外で、原料小麦の収穫年をあえて表示することはありません。
一般流通での理由はわかりませんが、自分で製粉、販売を少しやってみた経験から言うと、新物が出た時点で手元にある在庫は古物になってしまいますので、新しさをアピールした販売方法をしていると、古物の在庫を抱えたときに困る事になるのではないかと感じました。
収穫祭としてのイベントで新麦をアピールするのは、農産物を知って貰う機会としてとても良いと思いますが、「古麦=劣る」の図式で誤解されることのないようにフォローも忘れずにお願いしたいところです。
農産物は気候による不作などで収穫量が激減する場合もあり、食糧の安定供給を考える上で数年分の貯蔵は必ず必要なものです。理想は一人ひとりが自覚と思いやりをもって古い物から順に減らしていく事なのではと思いますが…。
そうは言っても自分もわがままで誤解がちの消費者の一人です。
「新しい=美味しい」のイメージがありましたけど、実際はどうなんでしょう?
ひょんなことから8年前の無農薬キタノカオリで焼いたパンを貰い、実際にそこから学ぶ機会をいただきました。
古い味がするのかな?と直前まであった勝手な決めつけは、ただの無知だったんだと教えられる、古い味などどこにもないとても美味しいパンでした。
8年前の小麦はさすがに古すぎだと思いますけど、言われないと(ても)違いがわからない程度で、2~4、5年前のものなら尚さら劣化していないどころか、産年度による風味の違いを考慮すると「数年前の小麦の方が美味しい」なんて事もありそうです。(保管状態が悪いのは論外とします。)

冷凍庫に冷凍保存してありました、写真残せてよかった。
収穫後に急いで選別し、玄小麦をお送りして試作していただいたものです。
穂発芽のキタノカオリは全く膨らまないと以前からよく耳にしていましたし、パンの膨らみ指標といえるアミロやFNの分析数値は軒並み半分以下。
半ば諦めの気持ちで玄小麦を送り、きっと悪い感想しか聞こえてこないと待つこと数日…。
ほんと玉手箱ってこういうものなんですね、開ける時もどきどきしますけど、そのパンを見てから、今年のキタノカオリでもいける!と気持ちと身体さえも軽くなったのを覚えています。
だって極低アミロで尚且つ全粒粉100%で、膨らみが少し弱いとはいえ立派なパンになってるんですよ?
肝心の味に関しては、通常時のパンとは別のジャンルになっているのかなと、発酵熟成系食品のように味が濃くなったりコクがでてたり、匂いが魅惑的になってたりします。
あと、ほんの僅かな苦味を感じられる場合があったりなかったりしますし、その辺も含め好みが別れる所なのかなと思います。(ちなみに後味のエグ味はありませんでした。)
感謝の気持ちでいっぱいです、いつもありがとうございます。

穂発芽した低アミロの小麦粉は膨らまない、パンにならない。
そんな「常識」はどこへやら、しっかり膨らんでパンになっています。
それも「最も穂発芽に弱く、低アミロになりやすい」と言われているキタノカオリでです。
登熟期における過去最高の日照不足からの不稔や未熟粒の多発、さらに追い討ちとして収穫期の長雨による過去最高の穂発芽(この時の穂発芽はまだ青い穂から穂発芽する異常な穂発芽でした)、まさに踏んだり蹴ったりで止めまで刺された感のある、世紀に1度レベルのキタノカオリでです。
何が何でも穂発芽させると天の意思すら感じた天候でしたが、その結果こうしたパンを産み出したとすれば、きっとそこには何かあるのだろうと、美味しいパンを食べながら思わずにはいられません。
美談?ばかりでもあれなので…、軽い穂発芽程度であれば製パン性は劣るものの甘味がまし美味しくなりますが、今年のキタノカオリのように重度の穂発芽で天然熟成クラスになると旨味まで出てきます、でも、少し後味にエグ味が感じられ良いことづくめでもないようです。
紹介したパンは勝手に名付けてm.kブレッド(仮)、勇者を讃えています、作っていただきありがとうございます。
パンの具材として大定番のクルミとレーズン、なんでそんなに相性がいいのか常々不思議に思っていました。
ふと小麦畑を見回すと、理解うんぬんではなく納得できる光景に出会います。

畑の周りにある野生のクルミの木から落ちたクルミの実

畑の周りにある野生の山ブドウ
なんでこんなにも都合よく揃っているのかわかりません、こうした光景を見ていると、もっと違う不思議を感じるようになります。

イタリア産ファッロ小麦の試験栽培
ファッロとは古代小麦全般の呼称らしく、購入種がスペルトなのかエンマーなのかはっきりしませんが、種の形状がスペルトとは明らかに違ったので、おそらくエンマー小麦だと思います
今のところ異国の地で旺盛に生育しています
さあ、これからの厳しい凍結、積雪に耐えられるでしょうか?

こと風味では無敵の王者とも言えるホクシン、でも高すぎる風味が逆に仇となることもしばしば。
灰分が高いホクシンはミネラルが豊富で、それが風味の高さにも繋がっています。
しかし、灰色っぽくくすんで見える粉色は、見た目で判断される用途(うどん等)では評価が下がる場合もありました。
約8年前までは中力用途として広く栽培されていましたが、きたほなみ登場以降はほぼ全量栽培が置き換わりホクシンは過去の小麦となりました。
灰色の粉色がさほど気にならないパン用途として風味の高さが再認識され、一部で栽培が復活しましたが、その量はほんのわずかです。
小麦に限らず無農薬栽培の難関は雑草との闘いになることが多いです。
ホクシンは熟期がそれまでの品種よりかなり早いこともあり、対処困難な雑草が種を増やす前に収穫できたため、それらの雑草は種を増やせず徐々に減り始めました。
また、越冬時に積雪下で枯れてしまう冬枯れ病の耐性が、それまでの小麦より格段に上がっていたのも無農薬栽培にとって大きな弾みとなりました。
穂発芽小麦は製品にならない屑とされていますが、これは物余り飽食の現代ならではのことで、きちんと選別すれば食糧として何の問題もありません。
発芽米や発芽豆などの発芽雑穀が、健康志向や味わい向上のため一部で行われているように、発芽小麦だけが例外ではありません。
味に関しては目より口なので実際に試してもらうよりないのですけど、参考までに書いておきます。
小麦は粒の状態で口にしても、どの品種もあまり味がなくそっけないものですが、穂発芽小麦は味がある分、美味しく感じられます。
基本的に甘味が増す感じでしょうか、中には熟成加減が絶妙な粒もあり強烈な旨味を醸しています。
注意としては、数千粒に1粒くらいの割合で色の変な粒もありますので、これらは選別などでしっかり取り除いた方がよいでしょう。
一つ一つが本や章になるほど奥が深いですが、長文が苦手なことと、既に長文になっていることからはしょります。
冒頭の写真のパンは、穂発芽オーガニックホクシン100%、石臼挽きたて全粒粉、長時間発酵、石釜です。

キタノカオリ2016が30%とキタノカオリ2015、キタノカオリ2013、きたほなみ2014のブレンドパン、全てオーガニック。
下4桁の数字は収穫年で、キタノカオリ2016が天然熟成キタノカオリです。
不思議だなーと思うのがキタノカオリの使われ方、2016はともかくとして、その他にも2種類のキタノカオリを贅沢にブレンドしています。
おそらく東京のイベントでたくさんのパンに紛れていると思います、みつけられるかな?
「もうちょっと選んでいいのに、選んだ方がいいのに」
パンを含め食料品やお店が氾濫している今の状況を見ていてそう思います。
パンや小麦粉の原料である小麦の生産者から見て、「うわー知らないんだ」と思うことが多々あります。
「今より少しでも知ってもらえたら」、そんな想いを込めて、北海道の農場、小麦の生産現場からパンの原料になる小麦のことを生産者視点でお伝えします。
しっかりしたパン屋さんの選び方
パン屋さんで店員さんに「このパンに使われている小麦の名前を教えて下さい」と聞いてみてください。
どんな答えでも構いませんが、そのそぶりで信頼できる店かどうかわかります。
粉になる前の小麦には1つ1つに名前があり、誕生の背景、歴史があり、そこには沢山の想いが込められています。
しっかりした職人さん、お店はそのことがわかっています。
おそらく地域に1店あるかないかだと思います、あればそのお店は地域の宝ですので大切にしてください。
北海道産パン用途小麦の主な品種まとめ
春小麦:4月(春)に種を蒔き8月に収穫
- ハルユタカ
- 春よ恋
- ハルキラリ
秋小麦:9月(秋)に種を蒔き越冬、翌年7月末~8月初旬に収穫
- キタノカオリ
- ゆめちから(超強力)
- ホクシン(準強力)
- きたほなみ(中力)
いくつか品種がありどれも個性的ですが、その中でもパン用として特に人気が高い「キタノカオリ」をご紹介します。

国産小麦のパン用粉(強力粉)は今や普通に手にすることが出来ますが、ほんの10数年前までは殆んど見かけませんでした。
強力粉用途として2003年に品種登録されたキタノカオリは、それまで無理とされていた国産秋小麦での硬質品種の育種でしたが、その常識を打ち破り史上初の快挙と共に登場しました。

ほんのり黄色く甘いその粉の特徴的な個性で、今や不動の人気となりました、しかし栽培適正はお世辞にもよいとは言えず生産者泣かせの品種です。
8月の畑の風景、何度も耕し種まきの準備をします。

ここまでの作業をパン作りに例えると、生地作りにとてもよく似ています。
しっかりと土作りをすれば、土から甘い芳香が漂うようになります。
北海道では通例9月中旬に種まきをしますが、有機栽培の場合は種まきを少し早めます。

約1週間~10日ほどでキタノカオリの発芽が揃いました。

この後、12月からは積雪下で長い越冬期間となります。
自然は語りませんが実に多くのことを教えてくれます、小麦も語りませんが長く付き合うほど自然とわかり合えるようになるのは動物のそれと同じです。
パンを選ぶ時、小麦粉を選ぶ時、わかって選んで貰えるよう、そんな人が増えるように願っています。
profile:中川農場
北海道の農場で主に小麦をオーガニックや自然栽培で生産。農場の歴史は約90年、オーガニック転換から約18年。
【blog】https://pirkaamam.com